都立中高一貫校の高校募集停止について
東京都教育委員会が11月22日に発表した「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)(案)」にて、併設型中高一貫教育校5校(白鷗・両国・武蔵・富士・大泉)の高校枠の募集を停止する予定だと発表しました。(時期は未定) まだ、「案」の段階ですが、多分決定する物と思われます。
「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)(案)」の骨子
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2018/files/release20181122_01/02.pdf (37ページ)
1. 併設型中高一貫校とは
中高一貫校と一口に言っても実は3種類存在します。「中等教育学校・併設型中高一貫校・連携型中高一貫校」です。以下に簡単にまとめましたのでご覧ください。いずれの学校も6年間の教育を一貫(連携)して行う学校です。
中等教育学校 ・・・高校募集はない。
併設型中高一貫校・・・高校募集を行う。接続している中学校からの生徒は試験がない。
連携型中高一貫校・・・高校募集を行う。接続している中学校からの生徒も試験がある。(推薦)
連携型中高一貫校は今回の話に出てこないのでこの話では知らなくても構いません。上2つの中高一貫校の種類は覚えておいてください。すぐに出てきます。
2. 併設型中高一貫校高校募集廃止の詳細
都立併設型中高一貫校には、現在5校あります。それぞれの中学組と高校組の組数を見ていきましょう。
※中学組・・・中学受検で入ってくる生徒。
※高校組・・・高校受験で入ってくる生徒
白鴎高等学校・附属中学校・・・中学組4組, 高校組2組
両国高等学校・附属中学校・・・中学組3組, 高校組1組
富士高等学校・附属中学校・・・中学組3組, 高校組1組
大泉高等学校・附属中学校・・・中学組3組, 高校組2組
武蔵高等学校・附属中学校・・・中学組3組, 高校組2組
今回、東京都教育委員会が発表したのは、赤字の部分を廃止すると言うことです。つまり、上記5校の高校入試を廃止して、中学受検(適性検査)のみにするということです。
3. 中学校段階の生徒募集は増加するのか?
高校段階での生徒募集を停止するとともに、中学校段階からの 高い入学ニーズを踏まえ、中学校段階での生徒募集の規模の拡大を含めて検討します。
今回の案では、確かに中学校段階の生徒募集(中学組)の生徒の数を増やす予定であると書いてあります。確かに、高校募集を廃止すれば、中学組の生徒数も増えると考えるかもしれません。しかし、中学組を1クラス増やすということは、教室が6クラスいることになります。つまり、学校の改築・改修を行わない限り高校組2クラスを廃止しなくてはなりません。だから、高校組が2クラスある白鴎・両国・武蔵では中学組の募集が1クラス、40人増加することはあるかもしれませんが、高校組が1クラスしかない両国・富士は中学募集が増えないかもしれません。また、併設型中高一貫校になってから10年程度しか経っていないので、改築・改修はないかもしれません。生徒数が増えるのに教室数が増えないと、特別教室(理科室・音楽室・美術室等)が不足してしまいます。これでは折角、質の高い教育活動が維持できなくなるかもしれません。
4. 本当に高校募集を廃止して良いのか?
高校募集を廃止することは、本当に良いことなのでしょうか?確かに、高校募集を停止すれば、先ほど見てきたように中学募集を多少増やすことができます。事実平成29年度の中学受検の倍率(5校平均)は5.8倍と依然として高い傾向にあり都立中学受検のニーズの高さがうかがえます。それに対して高校受験の倍率(5校平均)は、1.5倍です。中学受検と比較すると、やはり低い数字です。しかし、その年の普通科全体の受験倍率(平成29年)は1.49倍とほぼ変わりません。これは、東京都教育委員会が説明している受験倍率の低迷とは矛盾しています。
しかし、高校組を廃止することはまず、生徒の教育の機会を奪うことになります。ただでさえ、年々私立高校の募集が減少していく中で、都立でも同様の事態になれば、中学生の進学先が減ることになります。東京都は周りに別の学校があるから高校募集を停止しても構わないという考え方は短絡的ではないでしょうか?「あの高校」に通いたい、でも中高一貫校で高校募集がないから通うことができないということはその生徒が可哀想ではないですか?これは生徒の問題ではなく、学校経営の効率と進学実績のみを追求している学校の問題側の問題ではないでしょうか?このことは昨今の移民問題に重なるところがあると思っています。「高校から入ってくる生徒=移民」のような構図になっているような気がします。(典型的な教育行政批判の文章になってしまいました。当の筆者もこのような文章を書くことは好きではありません。しかし、本当に問題なのは学校ではなくて大学進学実績で各学校を偏差値というもので序列化し、毎年の進学実績に敏感すぎる保護者やマスコミなのかもしれません。)
5. まとめ
いかがだったでしょうか。「だったら小石川はどうなんだ」と言われたら確かにそうです。本校も高校募集をしていません。本校も中学生に門戸を開くべきなのかもしれません。
思ったよりも記事が長くなってしまいました。今回はこの辺で終わりにしたいと思います。
第2回『小学生に知ってほしい数学』:正の数・負の数
小学校では自然数・0・分数・小数を習ってきたと思います。今回は第1回でも話したように『負の数』について扱っていきます。
1. 正の数・負の数とは?
正の数・・・0より大きな数
負の数・・・0より小さな数
小学校まで扱われる数は0より大きい数と0でした。今回、それには当てはまらない数を考えるために0よりも大きな数を正の数と呼ぶことにします。正の数は数字の前に+(プラス)という記号をつけて表すこともあります。また、今までのようにプラスを書かなくても構いません。そして、第2回の扱うテーマである0よりの小さな数のことを負の数と呼びます。こちらは数の前に-(マイナス)をつけて表します。正の数とは違い、マイナスは省略できません。また、0は正の数・負の数どちらにも属しません。
例
正の数・・・+3, +1.5, +4/5など
負の数・・・-5, -0.5, -3/2など
2. 絶対値のお話
当たり前のことですが、0より3大きい数は+3、0より7大きい数は+7です。この考えは負の数にも当てはめることができます。0より3小さい数は-1、0より7小さい数は-7となります。このように、マイナスの数は0よりどのくらい小さいかを表します。+3と-3、+7と-7。これらは符号をとってしまえば同じ値になります。このとき、+3と-3は絶対値が等しいと言います。絶対値とは0(数直線の原点)からの距離のことを指します。
絶対値は方程式や関数(今後開設予定)の計算をするときに出てきます。(絶対値が出てくると計算が面倒くさくなります!) また登場したときに解説したいと思います。
(絶対値なんてどうでもよいと思ったあなた。私もそう思っていました。でもこれを知らないと解けない問題がいずれ出てきます。)
次回予告:第3回は文字式、第4回は有理数・無理数を扱おうと思います。
コメント・質問はこちらへ・・・koishikawamath@yahoo.co.jp
『小学生に知ってほしい数学』
小学校では算数という科目で主に数や図形について学んでいると思います。しかし、中学校に進学すると、教科の名前が『算数』から『数学』に変わります。名前が変わってもやはり扱う分野は基本的に変わりません。難易度はもちろん上がります。しかし、小学生が知っていていても構わない、いや、むしろ知っていた方が良い分野もあります。このことは中学校に入学してからの学習に役に立つだけでなく、自分の視野を広げる(難しい言葉でいうと教養を身につけると言います)ことにつながります。もちろん、中学入試には役に立ちませんが1人でも興味を持っていただいたら幸いです。
この記事に対するQ&A
1. Q:扱う分野は何ですか?
A:中学校以後で習う数学の中で小学生に知ってほしい分野を選びました。
2. Q:前提知識はいりますか?
A:小学校4年生程度の算数があればわかるように記事を作成しています。
3. Q:中学受験に役に立ちますか?
A:中学受験では小学校で習うことを越えた知識を用いないと解けないことは基本的にはないので直接的には役には立ちません。しかし、ここで得られた思考力は役に立つかもしれません。
お知らせ(10/31)
昨日、中間考査が終了したため数学研究会の活動を再開します。今日から『小学生に知ってほしい数学』という記事を連載していきます。今後ともよろしくお願いします。
お知らせ(H30 10/17)
明日(10/17)が、中間考査1週間前になるのに伴い、中間考査終了日の10/29(月)まで、活動を一次休止します。活動再開予定は、10/30(火)です。その期間中、記事の投稿はありませんのでご了承ください。なお、コメント、及びメール(koishikawamath@yahoo.co.jp)の返信には対応しています。中間考査後、『小学生に知ってほしい数学』というタイトルで記事を連載していく予定です。乞うご期待。